大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(ネ)80号 判決

控訴人(原告) 黒田留吉

被控訴人(被告) 大竹貞慶 外一名

〔抄 録〕

(請求の原因)

一、別紙物件目録記載の土地(以下本件土地と呼ぶ)は、訴外根本仲の所有であつて、控訴人は同人から昭和二十一年一ケ年百四十四円の賃料で賃借し、これを開墾して良好な稲作水田(反収十俵位)となし、昭和二十一年以来耕作し来つたものである。

二、本件土地は耕作の目的に供されており、農地であるに拘らず、国は、昭和二十五年三月二日本件土地を自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第三十条第一項第一号の未墾地である原野として買収した。しかしながら、右買収処分は、既墾地を未墾地として買収したものであり、その違法なること重大かつ明白であるから、右買収処分は当然無効であつて、本件土地は今なお根本仲の所有に属するものである。

理由

本件土地がもと根本仲の所有であり、昭和二十五年三月二日自創法第三十条第一項第一号の未墾地として、国に買収されたものであることは、当事者間に争のないところである。

控訴人は、右買収処分は、既墾地を未墾地として買収したもので、その違法なること重大かつ明白であるから当然無効であると主張しているけれども、控訴人主張の買收処分のかしは本件一切の証拠によるも、そのかしが重大かつ明白ということはできない。もちろん、既墾地を未墾地として買收することは行政処分のかしにあたることはいうまでもないけれども、右のかしは買收処分取消の一事由たるに止まり、右かしによつて買收処分を当然無効たらしめるものではない。

(大江 猪俣 古原)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例